デジタル化が進んだことで、私たちの暮らしは便利になりました。その一方で問題となっているのが電子廃棄物です。
電子廃棄物は、不要になったIT機器やバッテリーなど電子機器の廃棄物のことをさします。デジタル化が急速に進み、廃棄される電子機器も増加の一途をたどることから、さまざまな影響が懸念されています。
この記事では、国際的な課題のひとつとなった電子廃棄物について、2023年時点での背景や、その影響を解説しましょう。
便利な現代が生み出した副産物「電子廃棄物」とは
不要となったPCやスマホなどの電子機器は、電子廃棄物(E-waste)と呼ばれます。内部にプライバシーや機密情報が保存されている可能性があるほか、有害な物質や貴重な資源も含まれているため、廃棄時には適切な処理が必要です。
もし処分方法が適切でない場合、環境だけでなく人体にも悪影響を及ぼすと言われています。機密情報が漏れた場合、さまざまなトラブルにもつながりかねません。
世界の電子廃棄物は、2019年時点で約5,360万トンに達しました。現在も世界中で増加を続けています。日本だけでなく、世界的な社会問題といえるでしょう。
電子廃棄物に分類される製品
電子廃棄物は、一般的に下記製品に分類されます。
- PC
- スマートフォンなどの携帯電話
- TV
- ゲーム機
- エアコン
- 冷蔵庫
- 洗濯機
- 照明器具
なぜ電子廃棄物が増加傾向にあるのか?
電子廃棄物が増加を続ける要因の一つに、消費サイクルが短くなっていることが挙げられます。デジタル開発の技術が発展し、新しい製品が次々に世の中に生み出されている一方で、これらの製品に使用している資材や材料をリサイクルするには、経済的負担が発生するため、中々リサイクルに使用されていない現状もあります。
また、電子廃棄物の処分に関しては、明確な国際基準がなく適正な管理が出来ていないことも増加に繋がっている要因です。処分の場所として、インフラが整っていない発展途上国へ輸出をしているケースもあり、国内では不法投棄も問題になっています。
電子廃棄物の回収方法やリサイクル方法など、システム整備も不十分であり、埋め立てによる処理や燃やして処理をするケースも多く、環境汚染の要因にもなっています。
便利で快適さが向上している反面、不要になった廃棄物への処分基準が明確に定まっておらず、対策が後手に回っており増加し続ける電子廃棄物への対策が追いついていないのが現状です。
電子廃棄物が及ぼす環境への悪影響
電子廃棄物は、有害物質を含んでいるため、適切な処分を行わなければ、人や環境への悪影響を及ぼします。身近には、見えない部分ではあるので、他人事をして捉えてしまうと、いつか自分や大切な家族の身に影響が降りかかってくる可能性も否めません。
私たちの暮らしに影響を及ぼす可能性のある有害物質
電子廃棄物の中には、「カドミウム」という有害物質を含んでいるものもあります。これは、健康被害を引き起こす要因ともなる有害物質です。その他にも、「鉛」を使用した機器もあります。
また、焼却処理を行っている場合には、「ダイオキシン」が発生します。このような有害物質を含んでいる電子廃棄物の多くは、発展途上国へ輸出され処分がされていました。現在では国によって、有害物質の影響で環境汚染や健康被害が深刻な社会問題となった背景を受け、電子廃棄物の輸入の受け入れを禁止するところもあります。
電子廃棄物が問題になるのは、有害物質だけではありません。冷蔵庫やエアコンの中には、温室効果ガス(フロン)が含まれているものもあります。温室効果ガスも誤った方法で処理されると、地球温暖化の要因になることも。
2019年には、不要になった冷蔵庫が要因で大気中に排出されたフロンは、9,800万トンを推計されました。(国連連合大学調査。二酸化炭素換算。世界の排出量の約0.3%。)
参考:国連大学「世界のe-waste(電子ごみ)が過去最多に、5年で21%増加」
電子廃棄物も適正な回収やリサイクルの重要性と課題
地球の環境や人体に影響を及ぼす可能性がある電子廃棄物をどのように廃棄していくのかは、人類は早急に取り組むべき課題のひとつでもあります。
今や世界規模での問題となっていますが、国連や地球環境を保全する団体だけが取り組むべき課題ではありません。消費者一個人の意識も今一度見直す必要があるでしょう。
日本では、エアコンやTV・冷蔵庫などをリサイクルするための「家電リサイクル法」・「小型家電リサイクル法」があります。消費者側は、家電を処分する際には、業者に対してリサイクル料金を払って引き取ってもらう形です。
業者側やメーカー側にも義務があり、不要な家電の引き取りやリサイクルを適正に行う必要があります。メーカー側には、上記に合わせてリサイクル率の数値目標(55%〜82%)が定められました。温室効果ガスを排出する家電にも、回収の義務があります。
電子廃棄物の課題を解決するために
日本に限らず世界中で、電子廃棄物の課題を解決する姿勢が求められています。特に不法輸出の制限・防止については、国際的に連携を取りながら規則の策定や促進を進めていく必要があるでしょう。
また、製造元や消費者に対しての意識改革の働きかけも必要です。製品の「長期間の使用」・「修理・再利用・リサイクル」への意識づけを行い、回収方法や処理責任に対する項目についてもルールを設ける必要があります。
意識づけを徹底しても、システムが未構築であっては意味がありません。社内リソースだけでは適切な処分が厳しい場合、部分的にでも処分の外注を検討しましょう。
電子廃棄物の処分を外注するポイント
ここでは電子廃棄物の処分を外注する際のポイントを紹介します。
まずは社内のシステムを見直す
処分を外注する前に、まずは社内のシステムを見直しましょう。
適切な管理・運用・処理ができるように、ある程度のシステムの整備も今後の課題となってきます。正確なデータを把握した上で、分析、改善策の立案なども必要になります。ルールを共通化し、周知、管理・処理の徹底は、早急に進めていくべき課題です。そのうえで、社内では厳しいと思われる部分の外注を検討します。
ただしもし社内リソースでは厳しい場合、もしくはプロに任せたい場合は、「どのように処分するのが適切か」という流れの見直しも含め、外注を検討するのも手です。
業者選びには注意が必要
ここで、問題になっているのは、不法投棄です。リサイクルに関する費用を負担したくない理由で、山奥などに勝手に放棄するケースもあります。
ただし引き取り業者を選ぶ際には、注意が必要です。選んだ業者が「無許可業者」で不法投棄を行っていた場合、消費者側に適正な処分の意思があっても、「廃棄物処理法」の違反に加担してしまいます。無許可業者が適切な処理を行っていない場合、火災や土壌汚染の原因になることも。
無許可業者の不法投棄や不適正な処理によって、環境へ及ぼす影響がいくつか報告されています。
- 事例1)不法投棄による大量の粗大ごみが発生。
- 事例2)環境に配慮していない不適正な処分により、大気中にフロンガスを排出。
- 事例3)発火性のある電子廃棄物の不適正な管理により、火災が発生
具体的な処分の手順を確認する
電子廃棄物の処分に関しては、業者だけでなく消費者である私たちもリサイクルや、個人情報保護に関する知識を持っておく必要があることを今一度認識したうえで、外注先で適切に処理されるかを確認しなければなりません。
例えば、クラウンレコードマネジメントでは、専用機械を使って物理的に機器を破砕・粉砕する、破壊前に消磁装置でメディアの保存データを消去するなどの対応が可能です。
契約前にどのような手順で処分されるかを確認し、納得してから契約する必要があります。
関連ページ:電子廃棄物およびIT資産の廃棄
まとめ
急速に増加し続けている電子廃棄物は、改善するための取り組みが求められています。目先の対策だけではなく、長期的に改善・減少をさせるためには、私たち一人ひとりの意識改革も必要でしょう。
技術は日々進化し続けています。しかしながら、作って終わり、使って終わりの意識ではなく、どう処理をしていくのかについても個々人が考えることが重要です。
まずは、自分ができることから取り組み、行動に移していくことから始めていきましょう。
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