IT資産に関する戦略は、事業戦略の一環として認識されつつあります。ペーパーレス化が進み、紙を利用してのから、デジタルでの文書管理への移行が進んでいることも背景にあるといえるでしょう。重要性が増しているからこそ、廃棄についてもこれまで以上に気を配る必要があります。
今回は、IT資産の基本と、IT資産廃棄の管理で起こる問題、廃棄に関わるITADの概要や押さえるべきポイント、IT資産管理のコツについてわかりやすく解説します。
IT資産とは
IT資産とは、IT機器、ソフトウェア、ライセンスなど、ITに関連する資産のことです。
ハードウェアとしては、PC(パソコン)・タブレット・スマホ(スマートフォン)をはじめとするデバイス、USBメモリ・サーバー・ネットワーク機器などがあります。ソフトウェアとしては、ソフトウェアやOS、そのライセンス、各種システムや文書などが含まれます。
IT資産廃棄で起こる問題
IT資産を廃棄する際、多くの問題が発生する可能性があります。具体的に起こり得る問題には、次のようなものが挙げられます。
- 廃棄が台帳に反映されない
- 廃棄の過程がわからない
廃棄が台帳に反映されない
詳細を確認せずにIT資産を廃棄してしまうと、その情報は資産台帳に記載されません。資産台帳とは、個人や組織の資産を管理するために会計で使用される台帳のことです。IT資産を廃棄していたことが資産台帳に反映されていないため、社内で正しい情報を共有できなくなる問題が起こります。
ときには、台帳に記載されたIT資産を業務で使用する予定だったのに実際には廃棄されていた、といった問題が起こる可能性もあります。予定していたIT資産が使えなくなるため、今後の業務に支障が出ることもあるかもしれません。
廃棄の過程がわからない
IT資産の管理を怠ると廃棄したのか、それとも紛失したのか判断することができません。特に紛失したのであれば情報が外部に漏れる可能性があるため、早急に対処する必要があります。IT資産を管理できていないと廃棄の過程もわからなくなるため、正しく管理することが求められます。
ITADとは
ITAD(アイタッド)とは、「Information Technology Asset Disposition」の略語で、日本語で訳すと「IT資産を適正に処分する」という意味があります。
不要になったIT資産を単に廃棄するのではありません。対象となるIT資産は、パソコンやネットワーク機器、スマートフォン、タブレットなどさまざまです。これらの端末は業務で必要になるものばかりです。ITADでは、これらのIT資産を適切に廃棄することで、プライバシーやセキュリティのリスクを軽減しつつ、資産の再利用やリサイクルで環境負荷を軽減することを目的としています。近年の情報漏洩リスクや環境といった事情を加味して生まれた手法との見方もできるのではないでしょうか。
関連ページ:電子廃棄物とは?処理に関する問題点と解決のポイントを解説
ITADで押さえるべき重要ポイント
IT資産廃棄が高い位置づけにある欧米では、さまざまなことが重要視されています。ITADで押さえるべき重要ポイントは、次のとおりです。
- 情報管理セキュリティ
- コンプライアンスとガバナンス
- ROI(return on investment)
情報管理セキュリティ
ITADで押さえるべき重要ポイントとして、情報管理セキュリティがあります。
IT資産の中には、個人情報や企業機密をはじめとする機密情報も多く含まれます。これらの情報が漏れると、企業が多大なダメージを受ける可能性があるため、最大限に漏洩のリスクを排除しつつ廃棄する必要があります。
IT資産を廃棄するまで、業者が端末を倉庫に運んで保管する期間があります。どんなに適正な廃棄方法を選択しても、廃棄するまでの過程でIT資産を紛失したり情報が漏洩したりする可能性もあります。IT資産の廃棄業者は数多く存在しますが、どのように情報管理セキュリティを実施しているのか確認して質の高い管理をおこなう業者を選びましょう。
関連ページ:機密文書廃棄を適切に行うには?
コンプライアンスとガバナンス
日本におけるIT資産の廃棄は、情報管理に関する法令と環境に関する法令に応じて実施されます。企業ではさまざまな法規制を考慮しながら、IT資産の廃棄に取り組んでいるのが現状です。特に近年はマイナンバーカードの導入により、社員一人ひとりの個人情報を企業が保有しています。これまで以上に端末機器の廃棄には注意しなければいけません。
ROI(return on investment)
ROIは「Return On Investment」の略語で、日本語で訳すと投資資本利益率という意味があります。投資でどれだけ利益を上げたかを把握するための指標であり、ROIの数値が高いほど投資がうまく進んでいることがわかります。投資資本利益率では、ITの導入投資に対するROIと、IT資産処分の費用に対するROIを考慮することが必要です。
ITの導入投資に対してのROIでは、購入費用に対する売却益が重視されます。IT資産を導入する際は、ある程度の売却金額を踏まえて投資することが求められるためです。ポイントとしてはより高額で売却することが求められるため、企業独自で競争入札を実施することもあります。売却益を見込まない、または計画していない場合は、IT資産処分の費用に対するROIという観点が必要です。
ITADがサスティナブルにIT資産を廃棄することに対する投資が有効かどうかで判断します。IT資産の廃棄にかかる費用は、運搬費用や情報消去費用、廃棄費用など直接的なコストだけではありません。検品や情報消去の作業、廃棄するIT資産のリストアップなど見えないコストもあります。
IT資産管理のコツ
IT資産管理のコツを解説します。IT資産廃棄による問題を防ぐためには、日頃から適切な管理をおこなうことが重要です。
- IT資産管理ツールやサービスの導入を検討する
- 担当者を適切に配置する
- 従業員への教育を徹底する
IT資産管理ツールやサービスの導入を検討する
IT資産を適切に管理するためには、専用の管理ツールやサービスの導入を検討してみましょう。そもそもIT資産はデバイス・ソフトウェア・電子文書など多岐に渡るため、台帳での管理が必要です。Excelや紙の台帳でも管理可能ですが、専用のIT資産管理ツールやサービスを利用したほうがより確実となります。サービスによっては、管理だけでなく、廃棄へも対応できるものがあります。
担当者を適切に配置する
IT資産を適切に管理するためには、担当者を適切に配置しましょう。担当者としては、セキュリティ担当者・情報システム部などがあります。社内におけるIT資産管理の流れを明確にしたうえで、配置を検討します。特に企業の規模拡大時や新規ツールの導入時など、社内の体制が大きく変わる際は、セキュリティへ適切に対応できる体制がどうかをチェックすることをお勧めします。
従業員への教育を徹底する
IT資産を適切に管理するためには、従業員への教育も徹底する必要があります。どんなに有用な管理ツールやサービスを導入しても、有能なセキュリティ担当者を配置しても、現場で働く従業員がIT資産について理解していなくては、適切な管理は難しいです。IT資産を適切に扱う重要性、管理・廃棄の方法などを従業員へ教育することで、リスクを低減することができます。
まとめ
IT資産を廃棄するときは、適正に処分するITADの考え方が注目されています。ITADで重要視するポイントは、情報管理セキュリティ・サスティナビリティ・コンプライアンスとガバナンス・ROIです。また日頃からIT資産の適切な管理を心がけることで、廃棄時のトラブルを防ぎやすくなります。
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